モノコックとラグ

カーボンフレーム

カーボンと言う素材とカーボンフレームについて詳しい方から話を聞く機会があったので、疑問を色々質問してみました。その一部をご紹介。何しろ難しい話だったので少し理解が違ったりしてしまった点も有るかもしれませんが、僕なりに理解した内容です。

ロードバイクのフレームは基本的に2つの三角形で出来ていてボトムブラケットやヘッドパイプといった構成パーツをパイプでつないでいる形をしている。このパイプ(フレーム)の結合方法には大きく分けて2つあり、それぞれのパイプをラグで繋ぐタイムやLOOKのようなフレームに代表されるラグタイプ。見た目にはつなぎ目が殆ど分からないピナレロなどが得意とするモノコックタイプ。市場に出回っているフレームを全体的に見るとモノコックフレームの方が多いがラグタイプとモノコックフレームは何が違うんだろうか?。一般的にヒルクライムバイクはモノコックフレーム。スプリントフレームにはラグタイプと言うイメージがあります。

  • ラグタイプ。

近年カーボンの接着技術が発達した事により、カーボンとカーボンの接着によるデメリットが軽減され、カーボンのラグ結合でも高い信頼性と高い精度を持たせられるようになりました。カーボンフレームの部品やフレーム本体を成型する場合、材料となるカーボンをフレームの形に成型するための金型が必要になります。その金型が大きければ大きいほどコストが高く、成型技術と成型精度も高度な技術が必要になるため、自転車フレームの各部品を小分けにして1つ1つの成型パーツを小さくし、小さい金型で高精度な成型を施し、精度の高い部品を作って繋ぎ合わせれれば、精度の高いフレームが作れると言う考え方から生まれた製法です。
メリットとしては、ラグでパイプを繋ぎ合わせるため、パイプの長さを変えることでサイズ変更の自由度が高く、試作・開発段階でのサイズ変更がミリ単位で行えます。各部の部品も小さく生産性にも優れ、高精度なジグがあれば組み付けでも高精度な寸法で組み付ける事が可能です。
デメリットは、カーボンのパイプを繋ぎ合わせる都合上、どうしても繋ぎ目の剛性確保が難しく、剛性を上げようとするとつなぎ目のボリュームがアップしてしまったり重くなってしまったりします。そうした場合、フレームに”癖”が付いてしまいます。(癖とは、シッティングでは問題ないが、ダンシングをすると違和感を感じるなど、乗り方を変えたときや乗った人によって異なる感覚が発生すること。)

ラグタイプとは反対に、より高い成型技術と高い精度の金型を使ってフレームを丸ごと成型してしまえば、高い精度のフレームが出来るという考え方の基で作られるフレーム。高い成型技術と高精度な金型が必要で金型自体もラグタイプより大きなものが必要です。
メリットとしては、ラグタイプのように部品を結合する部分を極力少なく出来るためヘッドパイプやボトムブラケットと言ったロードバイクフレームの重要な部分の設計に自由度が増し、その上、結合しない分、高剛性かつ軽量に作る事が出来るため、ヒルクライムで使うような軽量フレームの殆どはモノコックフレームを採用しています。
デメリットとしては、1つの金型から1つのサイズしか成型できない都合上、細かいサイズ設定が出来ず、多くのサイズを作る場合、その設定分の金型と製造工程が必要になってしまう点。

カーボンをロードバイクのフレームに使うメリットは、軽量で高剛性。そして各メーカーの考え方による味付け(癖づけ)が容易なこと。フレームを構成するパイプは円形が基本で、円形で作られたフレームは誰がどう乗っても基本的に同じ感覚を得やすいと言われています。そのパイプを縦に潰してみたり、横に潰してみたり、角を持たせたりすることで乗り方を限定し、特化させて行くことでメーカーが意図する味付け(癖)になります。これによって乗り手の使い方によりそのフレームが持つ”癖”を生かせるか?生かせないか?だったり好感触に感じたり違和感に感じたりします。
カーボンフレームの場合その形状だけでなく、使う材料の弾性率や繊維を組み込む方向によっても”癖”が付きます。硬く感じるか柔らかく感じるかはカーボンの弾性率によるものが大きくなるようで、30t〜40tグレード程度が人間が乗って違いを感じられる限界レベルだそうです。

カーボンフレームの寿命については、殆ど半永久的と考えて良いそうです。ただし半永久的なフレームにするには、いくつかの条件があり、それを満たしている必要があります。
1つは高い成型技術により成型されている事。(カーボン繊維内に気泡が入ったりしていないこと)それと、高性能な接着剤・定着剤を使用していること。要するに性能も耐久性も良い物を作るには、良い技術と良い材料で作られていると言う事が大前提のようです。
ちなみにカーボンの質を弾性率であらわす場合が多いのですが、高弾性の素材になればなるほど成型が難しくなり、気泡を抜く技術も高くなるため、しっかりした成型技術が無く成型した場合、加圧された気泡が高弾性の繊維を折ってしまい、繊維破断がおきてしまう事が有るので、そういうフレームの寿命については半永久的とは言えないそうです。それに加えカーボンは水に弱いので水を吸わない処置がされていること。カーボン表面は殆どの場合とそうしてあるので問題ないのですが、内部は塗装して無いので水に強い定着剤で成型されていないカーボンは水を吸って強度が落ちてしまう事があるようです。

カーボンと言う素材はとても奥が深く興味深いです。こういった開発に携われる仕事についている人が羨ましい(笑)。


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