カーボンという素材

其の2

以下のエントリーは、過去に掲載した記事を「雑学」カテゴリーにまとめるためのUPです。
前回ピナレロパリカーボンの素材46HM3Kと言うグレードの謎について調べた事を書きました。今回はカーボンの素材から見たロードバイク完成フレームについて少し想像してみようと思います。ピナレロのカーボンフレームに使われている素材は、50HM1K・46HM3K・30HM3K・30HM12Kと言う4種類の異なるカーボン素材を使っています。

これはいずれも高弾性率タイプ炭素繊維(HM)と言うグレードのカーボンを使用しています。多くのカーボンフレームが中弾性率タイプ炭素繊維(IM)を使っている事を考えると、ピナレロが使用している素材(HMカーボン)が特別なマテリアルである事が分かります。そしてピナレロには30HMグレードのカーボンを仕様しているフレームがFP6・FP5・FP3と3種類あります。その中でFP6は30HM3Kをマテリアルとして採用し、FP5・FP3は30HM12Kを選択しています。FP6とFP5・FP3はカーボンの素材が30HMで一緒なので、違うのは織り方(3Kと12K)とフレームディメンションです。

そしてFP5とFP3は、カーボン素材(30HM)と織り方(12K)が一緒でフレームディメンションが違うだけですから、この3台のフレームを乗り比べることによって、フレーム形状の違いによる特性の違いやフレームディメンションによる違いを体感する事が出来そうです。機会があればこれを踏まえて試乗すると楽しいかもしれません。

同じカーボン素材でも、12Kで織るのと3Kで織るのでは同じ面積でもかかる手間が大きく違う事は容易に想像できます。そう考えるとプリンスの1Kという細目で織られたカーボンは更に特別だという事が分かります。そして46HM3Kと言うマテリアルを使うパリ・FP7と50HM1Kを使うプリンスはピナレロの中でも特別なグレードだという事も分かります。カーボンの事をこれまで色々調べてみて、ロードバイクのフレームを作る素材としては現在一番適した素材である事も分かりました。カーボンをフレーム素材に使うことで、フレームの形状を自由度に作れるという利点があります。それに加え、負荷が多くかかる部分を肉厚にしたり、負荷がかからない所を薄く作るなど形状を作るのに自由度があるので色々な味付けをすることができ、重量も最低限まで削る事ができます。

しかし、カーボンフレーム(モノコックフレーム)を作るのにはその製造工程で金型を使い形状を作らなければならないため、細かいサイズ設定のフレームを作るためには多くの金型を持つ必要があり、コストがかかります。そして金型でカーボンフレームを成型する工程上、選手に合わせた完全オーダーメイドのフレームが作り難いのです。仮にオーダーメイドのフレームを作るとすれば、その寸法の金型を作成しなければならないため大きなコストがかかってしまいます。このような状況を考えると、トップチューブで10mm刻みでカーボンフレームのサイズを提供しているピナレロの凄さが分かります。

そしてカーボンはどこか破損させてしまうとフレーム全体の性能が損なわれ修理が出来ない欠点もあります。これらがカーボンフレームのデメリットと言える部分かもしれません。逆に、ドグマのようなマグネシウムフレームやFP2のようなアルミフレームはサイズに自由度を持たすことが用意です。メーカーが対応するかは別として、オーダーメイドによるフレーム作成に対応しやすいといえます。現にドグマに関してはオーダーメイドでのフレーム作成をしてくれるという話を聞いた事があります。しかし、ドグマにも細かいフレーム設定がされていて多くのサイズから選ぶ事ができるので、フレームサイズをオーダーするまでも無いなと言うのが僕の感想です。
そしてどこか1箇所が破損しても修理がカーボンに比べて容易です。多少凹んでもその性能に大きな変化が無いというのも金属フレームのメリットかもしれません。ただしマグネシウムやアルミ・クロモリなどの金属フレームはカーボンほど細かなフレーム形状を作る事ができなかったり、肉厚の調節など細かい細工がしづらいデメリットがあります。

「軽くて、強く、腐食しない」21世紀型の先端機能材料と云われている炭素繊維(カーボン素材)は、軽くて、優れた機械的な性質(高比強度、高比弾性率など)と炭素質からくる優れた特性(導電性、耐熱性、低熱膨張率、化学安定性、自己潤滑性及び高熱伝導性など)を併せもつため、いろいろな用途に幅広く使われていますが、ロードバイクのフレームの素材としても最適であるという風に僕は感じました。

カーボンは金属フレームに比べてヘタリ易い・破損しやすい・長持ちしないなどの話を聞く事がありますが、それは素材がカーボンであるからというよりも各メーカーの作りだったり製造技術によるものだと思います。やはりカーボンを素材としたフレーム作りには金属素材と違い高度な技術が必要とされますので、そのフレームが何処でどのような製法でどの素材を使って作られているか?によって千差万別なフレームが出来上がります。そういう事を踏まえると、少し高価であるとしてもしっかりした技術のあるメーカーのフレームを選ぶというのは長い目でみればお得なのかもしれません。


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